(この前書いた記事だけど、途中まででアップし忘れてました)
「う〜ん・・・」。僕は、思わず目の前のオーストラリア産のメルローのワインを飲み干してしまった。
ピアノとベースのリズムやフィールが、ばらばらだ。たまには、こんな演奏もあるものだ。場所は、渋谷のあるライブレストラン。隣にいるのは、シドニーから来日している友人のジェイソン。僕は冗談まじりに、ジェイソンに言った。「もしかして、彼のベースよりも僕の方がましかもよ」。ビートのないウォーキングはまるで気の抜けたビールのようだ。
ジェイソンと僕には、共通の興味があって、ジャズとワイン。この日、ジェイソンはたまたま渋谷のセルリアンホテルに泊まっていて、「Koji,どこかジャズを聴いてワインの飲める店はない?」という質問からこの日のツアーが始まった。
もちろん、セルリアンにあるJZ Bratというオプションもあるが、この日はビッグバンドっぽいもので、ジェイソンのテイストとは違っていた。そこで、先日たまたま見つけたこのお店に行くことにした。お店の雰囲気もニューヨークスタイルでお洒落。ワインもおいしそうだしと思って、ジェイソンを連れていった。
ところが、3曲目の"Waltz For Debbie"が終わる頃には、僕たちは1杯目のグラスを空けて、そそくさとお店を出てしまった。考えてみれば、ここは、ジャズ演奏を売り物にしているお店でもなさそうだ。あらためてワインの飲みなおそうと、西武の地下のワインテイスティングのお店に行った。そこでジェイソンが選んだのはピノワール、僕はカベルネ・ソービニヨン。ふたりともほろ酔いかげんになって、店を出た。
「でもやっぱり、もう1軒ジャズのお店に行こうか」という話になった。渋谷だと、僕もあと1軒くらいしかライブハウスを知らない。ところが、そっちのお店はフルート、ギター、ベース、ドラムという構成で、どっちかというとサックスカルテットが好きなジェイソンは、「どうしようかなあ」と迷っている。
しょうがないので、道玄坂の屋台でとんこつラーメンを食べながら作戦を練ることにした。「どこか、ワインがおいしくて、サックスカルテットの聴けるお店はないか」。渋谷からの至近距離だと、あとは表参道のBody & Soulあたりか。
さっそく電話をすると、この日は、近藤和彦カルテットで、ジェイソンのテイストぴったりだ。しかし、すでに第1ステージは終わり、第2ステージの開始が午後10時20分だという。「どうしようかな」と迷うジェイソン。 時間は容赦なく過ぎていく。(つづく)